鋼製電車黎明期の昭和初期には、先般RM LIBRARY 265・266で紹介した日本車輌製電車をはじめ、各車両メーカーにていわゆる「レディーメイド」の標準設計電車が製造されました。なかでも川崎造船所による標準設計電車は、屋根の深い見るからに頑丈そうなスタイルが特徴で、阪神急行電鉄(後の阪急電鉄)や西武鉄道、目黒蒲田電鉄(後の東急電鉄)といった、後に大手私鉄となった事業者での導入例も多く、計62両が6事業者に供給されました。また、ほぼ同一設計の車両が日本車輌および大阪鐵工所でも製造され、計32両が供給されたことも特筆されます。
本書ではそのようにして全国各地に供給された川崎造船所の標準設計電車および類似設計の日本車輌製・大阪鐵工所製の電車を含めて「川造型」という括りでとらえ、2社のカタログなどを添えながら製造時の活躍や譲渡後の姿を紹介します。上巻では西武鉄道および目黒蒲田電鉄に投入された「川造型」各形式の概要および引退後の地方私鉄への譲渡車両を紹介します。