従来の木造車両に代わって鋼製車両が普及し始めていた昭和初期は、同時に全国各地で地方鉄道が新規開業する時期でもありました。当時より日本を代表する車両メーカーのひとつであった日本車輌では、標準規格を定めたうえでこれらの鉄道に対し各社の輸送需要に合わせた車両を設計・提案することで、高効率・短納期で低コストな鋼製電車を納品していきました。それらの車両は各社で創業時の記念物的な存在として大切にされ、製造後90年以上を経た現在でもそのおよそ1割が保存車として残存し、姿を見ることができます。
本書上巻では上田交通、京福電鉄福井支社、高松琴平電鉄、一畑電鉄などで用いられた一連の標準設計電車の生涯を、当時の日車カタログも交え解説します。