既に270号を超える長い歴史の「RM LIBRARY」から、過去の傑作巻を2~3冊分まとめて復刻する「RM Re-Library(アールエム リ・ライブラリー)」。シリーズ15巻目は、RMライブラリー第3・4巻という初期のナンバーから、「私鉄買収電機の系譜(上・下)」(吉川文夫 著)の合本です。 「買収」とはここでは戦時輸送のために私鉄路線を国鉄が買収し、そのネットワークに組み込んだことを表しています。首都圏でも南武線や青梅線などが該当し、地方では仙石線、身延線、大糸線、飯田線、阪和線、宇部線などが該当し、路線ごと買収された電気機関車は国鉄の機関車としての形式・ナンバーが与えられ、あるものは当初の路線で、あるものは異なる路線でも働くようになりました。そして国鉄で一定の役割を果たした後、また別の私鉄に払い下げられたものも多く、それらの一部はなんと事業用途として現役で籍を残しているのです。 戦時中までに完成していた電気機関車、ということから海外からの輸入機と初期の国産機という、いずれも技術的に特徴のある機関車が多く、形態的にもバラエティに富んでいます。また数奇な運命を辿ったという点でも見どころが豊富です。 本書は私鉄の車両史の第一人者であった故・吉川文夫さんの著によるもの。氏独特の網羅性・厳密性を持った記述の中に、ちょっとしたペーソスや愛着を窺わせる文章が含まれており、資料性だけでなく読み物としても一流の仕上がりとなっております。