モータリゼーションの進展が著しいアメリカでは、路面電車の経営悪化への対抗策として1920年代末よりアメリカの電気鉄道事業者代表が結集して「Presidents Conference Committee(電気鉄道経営者協議委員会)」を結成し、高性能な路面電車を開発しその規格を制定しました。間接自動制御とフットペダルによるコントロール、カルダン駆動による高加減速、弾性車輪による防音防振に配慮したこれらの車両は「PCCカー」と呼ばれ、その技術は後に鉄道車両発展の原動力になりました。
戦後の日本でもその技術に着目し、規格を継承したTRC社のライセンス下での製造を模索しますが、高額なライセンス料や過剰な性能、日本の路面電車には馴染まない操作方法などから1両で断念、以後は1953年に組織された「六大都市無音電車規格統一研究会」制定の規格に則り、国内の独自技術による「無音電車」と呼ばれる高性能電車が各地に登場しました。しかし、その後高度経済成長を迎え路面電車の衰退が進む日本ではその先進技術が保守面で持て余され、他社への譲渡も一部に終わりました。
本書では1953~56年に東京・名古屋・大阪・神戸などに投入された、これらの新技術を取り入れた「無音電車」各形式について解説します。
主な内容●高性能路面電車の先駆け「無音電車」(カラーグラフ)●PCCカーとは●PCCカー国産化の模索(戦前の動向・戦後の動向)●国内最初のPCCカー、都電5501号登場●日本版PCC「無音電車」開発へ●「無音電車」総覧・1953(昭和28)年 名古屋市電1815→1901・大阪市電3001→3000・都電5502●「無音電車」総覧・1954(昭和29)年 都電6501・名古屋市電1902~1921●「無音電車」総覧・1955(昭和30)年 都電7020・神戸市電1151・1152・都電5503~5507●「無音電車」総覧・1956(昭和31)年 大阪市電3001~3050・名古屋市電2001~2029/801~812 神戸市電1153~1158・鹿児島市電701~704AB