江若(こうじゃく)鉄道は滋賀県の琵琶湖西岸に沿い、浜大津~近江今津間51kmを結んでいた非電化ローカル私鉄である。今から100年前の1921(大正10)年3月に三井寺下~叡山間の約6kmが開業、その後10年をかけて全線が開通したが、鉄道名の由来となった近江と若狭(福井県嶺南地域)を結ぶ計画は実現しなかった。開業当初は蒸気機関車による牽引であったが後に気動車を積極的に導入し、その両数の多さもあって東の関東鉄道と並ぶ「西の気動車大国」としてファンには知られていた。
その後、関西地区と北陸方面を短絡する国鉄湖西線(山科~近江塩津間74.1km)の建設が決定し、路線の大部分が重複する江若鉄道はその跡地を転用する目的もあって、1969(昭和44)年10月限りで鉄道線全線が廃止された(現在は「江若交通」というバス会社として存続)。本書上巻では路線建設の成り立ちや各駅の解説、沿線施設も含めた沿線模様についてお届けする。