紀州鉱山は、紀伊半島の山深く、和歌山、奈良の両県境にほど近い、三重県南部の紀和町にありました。この鉱山は、紀和町の中心地である板屋に本部・選鉱場があり、そこと周辺に点在する拠点や鉱区とを結ぶ軌道がありました。この軌道は鉱石の運搬を目的としたものでしたが、従業員や沿線地域に住む従業員の家族のために定期客車列車も運転されており、地域の交通手段としての側面も持っていました。本書はこの軌道の最後の日々の姿とともに、その概要、車輌を解説するものです。