「無軌条電車」とは文字通り線路のない「電車」です。その姿から一般にはトロリーバスと呼ばれますが、日本では法規上は「鉄道」の一種に分類されます。大阪市の無軌条電車は戦後の1953(昭和28)年に誕生し、最終的には路線長37.9km、車輌数134輌と、国内では最大規模の無軌条電車でした。当初は市電に代わる新世代の交通機関として期待された無軌条電車でしたが、急速な自動車の普及とともに交通渋滞が深刻化すると、路面電車と同じく運行に支障をきたすようになり、またディーゼルエンジンのバスの大型化も進んだことからその存在意義が薄れていきました。その廃止は大阪が万博開催で賑わう1970(昭和45)年のことでした。本書は大阪市営無軌条電車の誕生から廃止までの足跡をまとめるものです。