第二次大戦後、インフレの進行とともに紙幣の需要が爆発的に増加した。これにより日本銀行本店から日本全国の支店への新札の輸送回数が激増することになった。しかし、当時、鉄道で現金を輸送する場合には一般の有蓋貨車が使用されており、警備上の問題があったのに加え、銀行職員や警備の警官は本来人が乗ることは考慮されていない貨車への添乗を余儀なくされていた。この状況に対応すべく、日銀により計画されたのが、現金輸送用の荷物車マニ34形である。
1949(昭和24)年に6輌が完成したこの荷物車は、警備上、目立つことのないように外観は一般の荷物車に似せて造られたが、その一方、現金を載せる荷物室は万一の襲撃にも耐えられるように窓が鉄板で塞げるようになっていたほか、中央部に銀行職員や警官が乗る警備室が備わっていた。
本書はこのマニ34形(のちのマニ30形)について、その誕生から改造、2次車への代替わり、そして終焉までを、製作当時をはじめとする多数の貴重な写真とともに解説。さらに日銀関係者からの聞き書きにより、これまで全く知られることのなかった「現金輸送用荷物車」の実像を詳らかにする。