何にでも熱くなり全身全霊で喜怒哀楽を表現していた。ときには踊る阿呆になりきり踊っていた。海から野生のインテリジェンスを学び、ほとばしる血気は街でも発散され、苦労や失敗さえ笑い飛ばす性根こそ昭和の哲学で強みだった。その在り方はアスリートとはいささか遠いが、生きる力にあふれ、開拓精神にあふれ、なによりサーフィンを心底愛していた。
このストーリーは当時を知るフォトグラファーの芝田満之がファインダーを通して切り取った、主に1970年代後半~1980年代のサーフシーンである。それは数多ある歴史のわずかな表情にすぎないが、手渡されたポジフィルムからは人生のあらゆる局面で出会う波に体ごとぶつかっていく、当時の熱狂が色濃く伝わってきた。
時代とともに変わるべきもの、受け継ぐべきもの、どちらある。ただ、そのフィルターすら持たず、何も知らずに年月だけが過ぎてしまうのは、この日本をホームとするサーファーにとっては損失だろう。だから、この特集は当時を懐かしむためという以上に、当時を体験していない世代にこそ捧げたい。
昔は良かった、なんてことが言いたいわけじゃない。サーファーとしての理想の在り方が時代とともに移ろいゆくのは当然のことだ。それでも、あんなサーファーになりたい、という憧れの連鎖が、世代をつなぐカルチャーの根であることは、いつの時代も変わらない。