戦前の鉄道の動力方式は、まだまた蒸気機関車が中心でした。一方、都市部では短距離に限り電車が導入れ、幹線では徐々に電化路線が拡大していく途上ではありました。電気機関車は長距離列車の牽引用として昭和初期にようやく国産化のめどが立ち、量産・新形式の製造が開始されたのです。同じ時期の貨物列車に目を向けると、大正時代に輸入された電気機関車がなおも使われ続ける状況で、時を待たずして旅客用電気機関車の国産化技術をフィードバックし貨物用の電気機関車の計画が持ち上がったのです。1934(昭和9)の9月に国産貨物用初の形式EF10として16両が製造され、運用が開始されました。国産による安定した性能と扱いやすさから評判を得、1938(昭和13)年には主に関門トンネル用が追加製造され、特急「あさかぜ」など旅客列車の先頭にも立つこととなったのです。さらに1940~42年には最終増備型として17両が造られました。その製造期間は9年、総製造数は41両という、発展途上にあった電気機関車のなかでは異例の長期に亘り、このことは同じ形式ながら前期型、中期型、後期型、さらにはステンレス車体のなどの車体に形態差が生まれることになったのです。本書は2009・2010年に発行した『鉄道車輌ディテール・ファイル』002・004・007をひとつにまとめ、再編集し、あまり総覧されることのなかった、電気機関車の礎の1両といえるEF10について各車のディテールをつぶさに見る、模型工作資料として最適な一冊となっています。