戦前のある時期、乗り物の世界に流線形ブームというものが世界的に起こりました。日本の国鉄の前身である鉄道省も例外ではなく、各種車両に流線形の設計を取り入れました。その一つとして特急用電気機関車として1936年に登場したのがEF55です。このEF55は電気機関車では珍しく、片方のみを通常の先頭とした進行方向の決まった車体を持ち、戦前・戦後を通して優等列車の先頭に立ちました。しかし次第に効率を求める時代になり、片先頭で、流線形ボディに覆われたEF55は使い勝手が悪くなり、3両のうち2号機、3号機が廃車・解体(改造)が行われたのです。残る1号機は準鉄道記念物の指定を受けるも、長く機関区の片隅に置かれていたのですが、JR化を見据えた1986年に奇跡の復活を果たし。それ以降はJR東日本の高崎・上越線を中心にイベント列車に活躍。2015年30年近くに及んだ復活後の動態保存を終了し現在は鉄道博物館に保存展示されています。本書では、EF55の登場の経緯から末期までの姿を追うとともに。1986年の復活時に撮影された各部のディテール写真や、図面でEF55の全てに迫ります。