戦前から戦時中に掛け、鉄道敷設法による予定線や、軍事的に重要な位置にある私鉄線を、国が買収し国有鉄道籍に編入した路線、買収線区のその対象は線路や付帯設備はもちろん、車両や従業員に至るまで国有鉄道へ編入され、戦時下での輸送に充てられたのでした。 これら買収された電車は、国鉄の車両となりいわゆる“国電”の位置づけとなったものの戦後、世の中が落ち着きだすと、買収会社ごとに異なる性能に、小型の車体形状など、国鉄内でも持て余すようになり、国鉄制式の電車が増備されると、各地の私鉄へと払い下げられて行ったのです。
本書では1936(昭和11)年買収の広浜鉄道(現・可部線)から1944(昭和19)年買収の宮城電気鉄道(現・仙石線)までの間に国有化された鉄道14社に在籍した337両の電車を取り上げ、払い下げ直後の姿から、末期の様子まで模型資料の観点から紹介していくものです。著者は旧型国電のオーソリティ、宮下洋一氏が担当し、戦後の電車の歴史を知る上でも手元に置いておきたい1冊となっています。
●掲載買収線区 宮城電気鉄道、青梅電気鉄道、南武鉄道、鶴見臨港鉄道、富士身延鉄道、信濃鉄道、富山地方鉄道(富岩鉄道・富山電気鉄道)、豊川鉄道・鳳来寺鉄道・田口鉄道、三信鉄道、伊那電気鉄道、阪和電気鉄道(南海電気鉄道山手線)、広浜鉄道、宇部鉄道(宇部電気鉄道)